【連載ばぁばみちこコラム】第七十三回 乳幼児健康診査 -4カ月健診- 広島市民病院 総合周産期母子医療センター 元センター長 林谷 道子

 生後4ヶ月になると、首が座り(定頸)、周囲に興味を持ち、笑い、声を出すようになります。自分の意思で手を動かし(手の協調運動)、周りの刺激をしっかり受け止めるようになります。
 また、物をじっと見つめ、目で追い(追視)、音のする方を向くことができるようになります。

生後3カ月頃の赤ちゃんに特有なしぐさ

 生後間もない2~3カ月頃の赤ちゃんが見せる特有なしぐさがあります。これらのしぐさは、この時期にしか見ることのできない可愛いしぐさです。

赤ちゃんのクーイング(Cooing)=言葉の始まり

 生後2カ月近くになると、赤ちゃんは、機嫌のいい時、「あー」「うー」といった声を出します。これが「クーイング」と言われるもので、言葉の発達の始まりだとされており、赤ちゃんが、声を出すことを楽しんでいるとも言われています。  

 クーイングは舌や唇を使わずに出る「アー」「ウー」などの単音で、生後1カ月頃から始まり、2~3カ月頃によく声を出すようになるといわれています。

 口腔内がさらに発達すると、クーイングから喃語バブリング)に移っていきます。喃語は唇や舌を使う「ばぶばぶ」などのより複雑な発声で、生後3〜4ヶ月頃から始まります。

 

 赤ちゃんは言葉を話さなくても、自分が注目され、相手がかかわりを持とうとしていることを感じ取ることができる一次的間主観性 (第53回コラムを参照ください)を持っており、これによる親子のつながりは愛着の土台となるものです。

 赤ちゃんがクーイングを始めたら、是非、その声に反応してあげてください。クーイングとそれに対するお父さんやお母さんの反応は「会話」の始まりです。

 クーイングには個人差が大きくクーイングがないお子さんもいますが、赤ちゃんが笑顔を見せたら、ご両親の方から話しかけるのも、コミュニケーションの発達を促します。

 

ハンドリガード(Hand Regard)=赤ちゃんが自分の手の存在を認識する

 ハンドリガードは、生後4ヶ月頃までに見られる赤ちゃんが手を見つめるしぐさです。生後2ヶ月頃から始まり、4ヶ月頃まで見られることが多く、拳をしゃぶったり、指をなめたりします。

 赤ちゃんはこれにより手が自分の体の一部だと認識し始め、少しずつ手を使うようになります。

生後2ヶ月頃には手を顔の前にもっていき、見つめたりなめたりし、自分の手の動きを自分の目で確認します。そして、生後4~5ヶ月頃には手を伸ばし、おもちゃを取ったり握ったりして本来の手の役目を覚えていきます。生後8~9ヶ月頃には左右の手に持っているおもちゃを持ち換えたり、お座りして両手を使っておもちゃで遊んだりできるようになります。ハンドリガードが見られたら、がらがらなどのおもちゃで遊ばせるのもいいと思います。

 

4ヵ月健診=重度の脳性麻痺や精神発達の遅れはこの時期に発見できる

 生後4か月頃は、モロー反射などの原始反射が消えていく時期で、首が座り(定頸)、物を見て目で追い(追視)、声を出して笑い手の協調運動などがみられるようになります。

 

①身体計測(身長、体重、頭囲、胸囲)

 母子手帳の身体発育曲線に計測した値を記入し、発育か曲線に沿っているかどうかを確認します。頭囲については急激な増加がないかも確認します。

②精神発達の遅れ

 あやしても笑わない、目を合わせても視線があわない、目で追ってこない、声かけに応じて「あー」「うー」などの声がでない場合には精神発達の遅れが疑われます。また、視覚や聴覚に問題がある場合もあるので注意が必要です。

③ 運動発達の異常

(1)定頸:首が座っているかどうかの確認は4カ月健診で最も大切です。

 定頸は赤ちゃんを仰向けにして、両手を持ち、ゆっくり引き起こして確認します。4か月では、両手をもって引き起こすと頭部と体幹が平行して動き、肘関節、肩関節に力が入り上肢を屈曲させます。床から45 度まで引き起こした時に頚部と体幹の軸が一致し頭部が後ろに倒れない状態を定頸と呼んでいます。

 引き起こしても、頭部が頚部と体の軸が一致しなかったり、上下肢を突っ張ったりして、頭部が後ろに倒れたままの場合、まだ十分に首が座っているとは言えないので、4か月前半であれば、約1か月後に再度経過を見る必要があります。

 

 

(2)姿勢と筋緊張の異常

 仰向けとうつぶせにして、赤ちゃんの姿勢や四肢の動き筋緊張を見ることによって、筋緊張が亢進しているか、低下しているかが分かります。

 4カ月の赤ちゃんはあおむけでは顔は正面を見つめ、四肢は床面から少し浮かして活発に動かします。両手は顔の前に持ってきて、手にふれたものをつかむことができます。

 うつぶせでは両肘で上半身を支え、顔を床に対して90 度くらいあげることができます。

 

 仰向けで頭を左右の一方に向けると、同じ側の腕と足が真っ直ぐに伸び、反対側の腕と足は内側に曲がるように入り込む反射(非対称性緊張性頚反射)が強く残っている場合や明らかな反り返り(後弓反張)がみられる場合には筋緊張の亢進と言えます。また、仰向けで四肢が床面についたままの姿勢(いわゆる蛙肢位)やうつ伏せで顔があがらないのは筋緊張の低下が疑われます。

 水平抱きにすると、通常はやや頭を挙げ、体幹は軽度の屈曲か伸展、上肢は軽く伸展し手を開き、下肢は軽く伸展します。水平抱きで体幹が逆U 字型(緊張低下))、頭部が後屈し下肢が伸展する反り返り(緊張亢進))がみられるのは異常所見です。

 

(3)手の握り

 手を強く握ったままで握らせようとしてもつかまない場合も異常が疑われます。

 

 姿勢や反射、筋緊張で明らかな異常が認められる場合には運動発達遅滞、脳性麻痺、知的発達遅滞などが疑われるため、医療機関の受診が必要となります。

 

 

4カ月健診頃に多い育児相談

①乳児湿疹

 産まれて1歳頃までの赤ちゃんの顔や首、体にできる湿疹を乳児湿疹と呼んでいます。乳児湿疹が将来アトピーになるかどうかは経過を見ないと分かりませんが、乳児湿疹のほとんどは皮膚が丈夫になる1歳頃までにはよくなります。

 

乳児湿疹の原因=新生児期の皮脂の多さと新生児期以降の皮膚の乾燥

  • お母さんからのホルモンの影響
     生まれたばかりの赤ちゃんは、胎内でお母さんからのホルモンの影響を受けており、皮脂の分泌が多く、顔や首を中心にニキビや脂漏性湿疹ができやすくなっています。また、皮脂にたまる脂肪分が毛穴などをふさいでしまうとさらに悪化します。

  • 新生児期以降の皮膚の乾燥
     生後3ヶ月以降、お母さんからのホルモンの影響がなくなると、皮脂の分泌は急激に低下し皮膚が乾燥して湿疹ができやすくなります。乾燥するとかゆくなり、赤ちゃんが無意識に引っかいて皮膚に傷をつけ、ブドウ球菌などの細菌に感染するとさらに悪化します。

 

乳児湿疹の予防と対策=皮膚の清潔を保つことと保湿

  • 新生児期からのこまめな入浴
     皮脂の分泌が盛んな新生児期の赤ちゃんは毛穴に皮脂が溜まらないようにするために、こまめな沐浴や汚れを拭き取ることで悪化を予防できます。赤ちゃんの皮膚は37度くらいのお湯で、手で撫でる感じで優しく洗い、拭くときもタオルでこすらないことが大切です。

  • 頭にできるかさぶたの除去
     髪の毛が多い赤ちゃんでは、頭に脂漏性湿疹によるかさぶたやフケがこびりついて毛穴をふさいでおり、取り除いて清潔に保つことが必要です。
     無理やりはがすとデリケートな赤ちゃんの頭皮を傷つけてしまいます。お風呂の前にベビーオイルなどを塗り、蒸したタオルをのせシャワーキャップでおおい、こびりついたかさぶたやフケをふやかして除去します。絶対に爪で取ろうとせずに時間をかけて、少しずつ取り除いて下さい。

  • こまめに汗を拭き、着替えを行う
     赤ちゃんと大人の汗腺の数は変わらないため、赤ちゃんは体表面積あたりの汗腺が大人の7〜8倍もありよく汗をかきます。特に頭や首、わきの下などは汗が溜まり、「あせも」の原因になります。シャワーや沐浴で汗を流すことが大切です。

  • 新生児期からの保湿ケア
     皮脂の分泌が急激に低下する新生児以降はお風呂の後に保湿クリームやローショで保湿をしましょう。

  • 新生児期からの爪切り
     皮膚をひっかいて傷がつき、悪化するのを防ぐためにも爪は短く切っておきましょう。

  • 寝具は清潔に乾燥を保つ
     汚れた寝具に寝かせることで乳児湿疹が悪化することがあります。シーツなどはこまめに換え、敷布団、掛布団などは乾燥を保つことが大切です。
     2歳を過ぎても湿疹が良くならない、または悪化している場合はアトピー性皮膚炎である可能性があります。

②おむつかぶれ

 おむつかぶれは、汗やおしっこ、うんちによっておむつの中が高温多湿になること、おむつによる摩擦などの機械的な刺激、おしっこやうんちから生じるアンモニアなどの化学的な刺激によっておこります。

 赤ちゃんの腎臓は大人のように尿を濃縮する力が弱いため1日に何回もおしっこをします。また、赤ちゃんの皮膚はバリア機能に大切な角質とその表面を被う薄い皮脂膜が十分ではない上、皮膚のpHがアルカリ性に近く、細菌やカビが侵入しやすい状態にあります。

 

 おむつかぶれは予防が大切で、そのためにはこまめにおむつを替えることが基本です。

 おむつを変える時にはぬるま湯で濡らした柔らかいガーゼでそっとぬぐい取り、5分程度乾かして、ワセリンなどの油脂性の軟膏を塗ってからおむつをつけましょう。乾いたティッシュや市販のおしり拭きなどで強くこすると赤ちゃんの皮膚を傷つけます。

 

おむつの選び方

 布おむつと紙おむつには、それぞれ利点と欠点があり、育児方針や生活スタイルに合わせて選ぶとよいと思います。夜や外出は紙おむつ、日中や家にいる時は布おむつにするなど使い分ける事もできます。おむつは①通気性、吸水性、肌ざわり、動きやすさなど赤ちゃんにとっての心地よさ、②購入費用や洗濯代などの経済性、③ゴミ処理など環境への問題、④お母さんにとって育児負担の軽減になるかを総合的に考えて選びましょう。おむつを替える時もおっぱいをあげる時と同じように赤ちゃんの表情をよく見て、「気持ち悪かったね。きれいになったね。」と優しく声をかけてあげて下さい。

③先天性鼻涙管閉塞症=赤ちゃんの涙目と目やに

 生後3ヶ月頃までの赤ちゃんは、睡眠中はまばたきが少なく、涙の分泌量が減るため、起きた時に白っぽい目やにがたまっていることがあります。

 また、赤ちゃんはまぶたの脂肪が多く逆まつげ気味であることが多く、まつげが眼球を刺激し目やにの量が増えますが、多くの逆まつげは成長とともに治ります。

 赤ちゃんの目やにの原因の一つに、先天性鼻涙管閉塞症という病気があり、約10%の赤ちゃんにみられます。

 鼻涙管は涙が鼻を通って鼻腔へ流れる通り道のことです。通常は妊娠6~7ヶ月ごろに、胎内で開通しますが、生まれたあとも鼻涙管が詰まったままの病気が先天性鼻涙管閉塞症です。涙が鼻の方へ流れないので常に涙で目が潤み、目やにの量も多くなります。特に一方だけの目にのみ症状がある場合には、先天性鼻涙管閉塞が疑われます。

 

 

 先天性鼻涙管閉塞症の90%前後は1歳ごろまでに自然に治ります。目やにが頑固に続く場合には、抗菌薬の入った点眼薬を使い、目頭の涙囊の部分を指で内側下方向にやや強めにマッサージ(涙嚢マッサージ)することで良くなることもあります。

 先天鼻涙管閉塞は自然に治りやすい病気ですが, 1 歳を過ぎると自然治癒は少なくなるといわれています。 自然に治らずに手術を受ける場合は,涙の排水管である涙道の中に細い針金を挿入して詰まりを開ける方法 (プロービングあるいはブジー)が主に行われますが、 1歳を過ぎて暴れてしまう場合には,全身麻酔が必要になります。

④乳児血管腫(いちご状血管腫)

 赤ちゃんの頭や頬などにあるいちごのように盛り上がった赤いあざは「いちご状血管腫」と呼ばれています。いちご状血管腫は皮膚の表面などに毛細血管が集まって増えていくあざで、皮膚に赤い斑点ができた後、盛り上がって大きくなり、いちごの実のような見た目となります。

 いちご状血管腫ができる部位は顔面頭頚部が60%、体幹が25%、四肢が15%です。大きさは様々ですが、赤ちゃんの1%に見られ、女の子に多い病気です。

 生後数週~3か月くらいの間に皮膚に赤い斑点ができ、生後6ヵ月以降盛り上がり(増殖期)、1歳6カ月から5歳頃までに自然に消えて(消退期)いきます。

 

治療

 多くのいちご状血管腫は5歳頃までに自然に消えてしまうため、以前は経過をみるだけでしたが、治った後に皮膚にちりめん様のしわ、たるみ、跡を残すことがあり、顔などの見える部分にある場合などは早期から治療すべきという方針に変わってきています。

 また、目の周囲にできた場合は、目が開きにくくなり視力障害へつながったり、口や気道にできると開口障害や呼吸困難を起こしたりする可能性があります。

 早期治療が行われるようになった要因としては乳児血管腫に使える薬として、プロプラノロール塩酸塩シロップ(商品名へマンジオル)が開発され、飲み薬によって直すことができるようになったことがあげられます。また、治療としてレーザー治療が行われます。

 赤ちゃんに見られるいちご状血管腫は、基本的には機能的な問題はありませんが、急速に大きくなったり、できている部位によって問題が起こったりする場合には、早い治療が望まれます。

 

 

赤ちゃんの睡眠・覚醒リズムの発達

 産まれてから発達する赤ちゃんの睡眠と覚醒リズムはサーカディアンリズム睡眠サイクルによって影響を受けます。

 サーカディアンリズム(24時間周期の概日リズム)は、地球の自転によって起こる24時間の昼と夜の周期に適応するために、地球上の生物に発達してきた基本的な生命現象の1つで、朝になったら起きて、夜になったら眠るという人の睡眠と覚醒のリズムもこれに従っています。

 

 生後1ヵ月までの赤ちゃんの睡眠と覚醒は、短い覚醒と睡眠が交互に現れるウルトラディアンリズム(縮日リズム)で、3時間眠った後、起きて母乳を飲むというリズムと一致しています。その後、生後1ヵ月頃から起きている時間と眠っている時間が分かれ、少しずつずれ (フリー・ランニング) 25時間である体内時計は、24時間の昼夜リズムにそろってきます。この時期は生後4か月で、赤ちゃんはほぼ一定の時刻に眠り、夜間はしっかり眠るようになり、8~10時間ほどまとめて眠れるようになる赤ちゃんもいます。

 

 睡眠サイクルには、浅い眠りであるレム睡眠深い眠りであるノンレム睡眠があります。

 赤ちゃんは大人と比べ、レム睡眠が多く睡眠時間の半分を占めています。そのため赤ちゃんは少しの刺激や物音でも目を覚ましてしまいます。赤ちゃんは成長と共にレム睡眠の割合が減り、ノンレム睡眠が増えてきます。

睡眠・覚醒リズムを作るポイント!!=朝の光と規則正しい生活と活動

 赤ちゃんは起きている日中の活動を通じて発達していきます。そのためには生後3・4カ月くらいから1歳までの間に正常なサーカディアンリズムと睡眠サイクルを作ることが重要です。

 そのために大切なことは、朝はカーテンを開けて日の光を室内に入れる、夜間は暗くするなどの昼と夜の明暗の周期を作ることです。また、明暗に同調した規則正しい生活や昼間の活動・運動などの子育てが大切です。人は昼間に活動し、光を浴びることによってメラトニンの原料となるセロトニン分泌され、それにより夜になると眠りのホルモンであるメラトニンが合成され、心地よい睡眠が得られます。

 

 月齢がたち、半年近くなると、赤ちゃんを無理に起こして授乳する必要はありません。夜間に1、2回は泣いても起こして授乳することは睡眠サイクルを乱すことにもなります。とんとんと背中をたたいてあげて、眠るようなら、そのまま寝かせましょう。

 

さいごに

 生後4ヶ月になると日に日に赤ちゃんの表情も豊かになり、活発に動くようになります。

 また、昼間起きている時間が長くなり、夜はしっかり眠れるようになり、生活リズムが整ってくる時期です。

 なるべく一定の時間に起きて、天気の良い日には外に出かけるなど赤ちゃんにたくさんの刺激を与えてあげてください。また、夜も一定の時間に眠るようにしましょう。毎日続けることが大切です。

ではまた。 Byばぁばみちこ