【連載ばぁばみちこコラム】第七十一回 子どもの福祉サービス -手帳、手当、年金- 広島市民病院 総合周産期母子医療センター 元センター長 林谷 道子

 子どもを育てる上で経済的な裏付けは欠かすことができません。子どもが障害を持った時に受けることができるものとして、障害手帳や手当・年金などがあります。これらを受け取るためにはご両親が申請をする必要がありますが、遅れるとさかのぼって請求できないことがありますので注意が必要です。

 

障害者手帳=障害がある児(者)に交付

 障害者手帳は障害のある人が取得できる手帳で「療育手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」の 種類があり、取得すると様々な支援やサービスを受けることができます。
 障害者手帳には、それぞれの障害の程度などに応じた等級があり、それによって受けられる支援やサービスの内容が異なります。

 

療育手帳

 知的障害児(者)に交付される手帳です。法律で定められた制度ではなく、都道府県・指定都市が独自の判定基準を設け、運用方法を決めています。そのため、受けられるサービスも地域によって異なっています。自治体によって愛の手帳とか愛護手帳などの名前で呼ばれています。

 療育手帳を取得するには、窓口で申請を行った後に判定を受けることが必要です。判定は18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所で受け、精神科医や心理判定員等の協議により区分が決まります。

 療育手帳の区分は、基本的には、重度「A」と重度以外の中軽度「B」の2種類で区分されていますが、広島県では最重度から軽度まで4段階に分かれています。

 療育手帳には有効期限があり、期限が切れる前に更新申請をする必要があります。また、都道府県の制度であるため、県外に転居した場合には返還が必要で、引っ越し先で療育手帳の再申請が必要です。

 

 

精神障害者保健福祉手帳

 精神保健福祉法に基づき、精神疾患によって6ヶ月以上の長期にわたり日常生活や社会生活が制約されている人に交付されます。
 対象は統合失調症、うつ病、そううつ病などの気分障害、てんかんなどの精神疾患です。
 申請には、初診から6か月以降に作成された医師の診断書が必要で、手帳の有効期限は交付日から2年です。

 

身体障害者手帳

 身体障害者福祉法に基づき、身体の機能に一定以上の障害があり、その障害が永続すると認められた人に交付されます。
 視覚、聴覚、内臓など、それぞれの障害ごとに等級が定められており、1級から7級に分類されており、1級に近いほど障害が重く、手帳は6級以上の障害に交付されます。
 手帳を申請するには、1年以内に作成された医師の診断書が必要です。障害が永続すると認められた人に交付するものなので、原則として更新の必要はありませんが、障害の状態が軽くなるなどの変化が予想される場合には再認定を実施することがあります。

 

 

障害者手帳を取得することのメリット

 手帳の交付を受けるには様々な準備が必要ですが、手帳を取得すると、日常生活でさまざまな支援やサービスを受けることができます。

 


 医療費の助成や車椅子など補装具の購入や修理の際にかかる費用の助成受けられます。また、スロープ・手すりの取り付けや段差の解消などの住宅リフォーム費用の給付が受けられます。また、公共交通機関の割引や各種税金の軽減、障害者雇用での就労も可能です。

 障害者手帳の取得については、お住まいの福祉担当窓口で相談できます。窓口で「障害者手帳交付申請書」をもらい、記載された事項を確認しつつ他の必要書類を用意しましょう。

 

児童手当

 家庭の安定と子どもの成長を目的に支給されているのが「児童手当」です。
 現行の児童手当には所得制限があり、子どもの年齢によって支給額に差があります。中学生までの子どもが対象で、対象となる子どもがいる世帯には「6月・10月・2月」と、年に3回に分けて、4ヵ月分の手当が支給されてきます。
 児童手当を受け取るには、子どもが産まれたり、転居したりした際に、市町村の福祉課児童福祉係に必要な書類をそろえて「児童手当・特例給付認定請求書」を提出する必要があります。申請した月の翌月分から支給され、申請が遅れた場合、過去にさかのぼって支給することはできません
 現在、わが国の「少子化対策」の1つにとして児童手当の拡充があげられており、所得制限の撤廃や支給対象年齢の引き上げ、第2子以降の支給額の増額などの案が出ています。

 

児童扶養手当、児童育成手当=ひとり親家庭に支給される手当

 離婚や死別などでひとり親になった家庭や両親のいずれかが障害を持ってしまった世帯の養育者に対して支給される手当で、国の制度です。支給対象は18歳未満(障害がある場合は20歳未満)の子どもがいる世帯です。
 児童扶養手当は受給者の所得制限だけでなく、同居している扶養義務者についても所得制限があり、また、養育費を受け取っている場合はその8割が受給者の所得として算入されるなど、所得に応じて全部または一部が支給されます。一方、「児童育成手当」は受給者のみに所得制限が設けられており、同居の扶養義務者の所得制限や養育費も関係ありません。東京都で支給されている手当で、限度額は「児童扶養手当」よりも高く設定されています。
 どちらの手当も「さかのぼっての支給はできない」ので、当てはまる場合にはできる限り早く申請をすることが必要です。

 認定後も所得や養育状況を確認するため毎年「現況届」が必要で、里親や福祉施設などに入所すると対象外となります。

 

特別児童扶養手当と障害児福祉手当

 どちらの手当も対象は、精神又は身体に障害を有する20歳未満の子どもで、特別児童扶養手当は障害のある子どもを家庭で育てている父母等に支給されるのに対し、障害児福祉手当在宅で暮らす障害児本人に支給されます。ともに所得制限があり、支給額が決まっています。

 

 

 特別児童扶養手当は、毎年4月・8月・12月に、それぞれ4か月分が支給され、障害児福祉手当は、毎年2月・5月・8月・11月に、それぞれの3カ月分が支給されます。これらは在宅での支援のための手当で、障害のある子どもが施設に入所すると支給されません。

 

障害年金

 

 障害年金は病気やけがによって生活や仕事などが制限される場合に受け取ることができます。
 障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて診療を受けた時点で国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」が請求できます。
 また、厚生年金には、軽い障害に対して障害手当金(一時金)を受け取れる制度があります。

 

 年金をもらうには、病気やけがで初めて医師の診察を受けた初診日の時点で加入していた年金(国民年金・厚生年金)の保険料を納めているかどうかが大切です。加入期間の3分の2以上国民年金の保険料を納付していること、直近1年間で滞納している期間がないことが障害基礎年金をもらえる条件になります。その後、障害認定日である初診日から1年6月経過した時点での障害の程度に応じて障害基礎年金がもらえるようになります。

 

 厚生年金については、初診時に保険料を納めており、1年6月経過した時点で1~2級の障害と認定されると障害基礎年金に乗せして障害厚生年金が支給されます。

20歳前の障害基礎年金

 病気やけがで初めて診察を受けた人の中には、まだ国民年金を収めていない20歳前の人で、将来障害を負ってしまう場合もあります。初診日の年齢が20歳前の人でも、初診日から1年6ヶ月後か20歳になった時点で障害が1または2級に該当している場合には同様に障害基礎年金がもらえます。

 

 

 

障害者扶養共済制度=親が亡くなった後に障害のある子どもに支給される年金

 障害のある子どもを育てている親が、あらかじめ毎月一定の保険料を納めておくことによって、親が亡くなったり障害を持ったりした場合に障害のある子どもに永続的に一定額の年金が支給される制度です。障害者扶養共済は都道府県・指定都市が実施している任意加入の制度で、掛金が安く掛金全額が所得控除対象となるなどのメリットがあります。

障害者扶養共済制度の対象

 この制度の対象になるのは知的障害、身体障害者手帳の1~3級、脳性麻痺などの永続的な精神身体障害のために将来独立自活ができない障害のある子どもです。

保護者の加入条件

 加入時年度の4月1日時点での親の年齢が65歳未満で、病気や障害がなく健康状態であること、加入を申し込む都道府県政令市に住所があることが必要で、障害のある子ども1人に対し加入できる保護者は1人です。

保険料と支給額

 毎月の保険料は、加入者の年齢(加入時年度の4月1日時点の年齢)によって異なり、1口あたり35歳未満9,300円から60~65歳23,300円で、親の年齢が若いほど保険料は少なくてすみます。

 加入者が65歳に達し、加入期間が20年以上になったら、それ以後の掛金は払う必要がありませんが、滞納した場合には加入者としての地位を喪失してしまいます。

 加入者が死亡、重度の障害となった時、その月から子どもに1口あたり月額20,000円、終身支給されます。なお障害年金をもらっていても支給されます。

 子どもが年金を管理できない可能性がある場合には、代理で管理する者を事前に指定しておく必要性があります。デメリットとしては加入時期や子どもの亡くなる時期によっては、掛金が年金額を上回る可能性があります。

 希望される場合には加入者(家族)が市町村の障害福祉課や行政の担当窓口に書類をそろえて提出すると申請ができます。

 

さいごに

 障害のある子どもやそのお子さんを育てているご両親が受けることができる手帳や手当・年金などの様々な福祉サービスの申請手続きは、分かりにくい点もたくさんありますね。
 ぜひ、居住地のある各区の福祉課福祉係にお問い合わせください。


 広島市のHPでも調べることができます。
 https://www.city.hiroshima.lg.jp/soshiki/54/40529.html


 子どもとご家族のために様々な福祉サービスが有効に利用されることを願っています。

 

ではまた。 ByByばぁばみちこ