特別支援教育に関わって思うこと 広島市教育長 糸山 隆

 全国的に少子化が進む中、広島市の小中学校の児童生徒数はこの10年間でほぼ横ばい、一方、この間、市立特別支援学校の小中学部及び市立小中学校の特別支援学級の児童生徒数は2倍以上に急増しています。近年の法制度の整備などを背景として、特別支援教育に関する理解や認識が高まり、子供の将来を見据え最善の教育を選択しようという保護者の真剣な思いの表れと捉えています。それに応えるべく、通級を含めた多様な特別支援教育の場を量的に整備していくことはもとより、その質を高めていくため、教員の専門性の向上や専門スタッフの確保などに努めます。

 

 また、通常学級でも、特別な配慮を要する児童生徒数が10年間で3倍以上に増え、各クラスに23人いる計算です。これは、先生方の発達障害等の理解が進み、「言うことを聞かない子」から「支援が必要な子」へと見立てが変化してきたことが一つの要因と考えています。その外、障害児とは異なりますが、LGBTで悩みを抱える子も同じくらいの割合でいると言われています。広島市が目指す「誰一人取り残さない教育」の前提は、多様性の理解と尊重です。一人で大勢をみなければならない担任だけでなく、学校の組織をあげて、さらには外部人材も活用した「チーム学校」として、多様な教育的ニーズを持つ児童生徒の存在を前提とした学校経営を実現していきたいと考えています。

 

 最後に、新型コロナウイルス感染症は収束の気配を見せず、広島市でも、家庭内等で感染する児童生徒の例が跡を絶ちません。こうした中、学校内での感染拡大が殆ど見られないのは、現場の先生方の日々の努力の成果です。改めて感謝申し上げますとともに、一日も早く平穏な日常が戻ってくることを願っています。

 

 

(2021年2月発行「Circle of Smiles」掲載)