【連載 ばぁばみちこコラム】第二十八回 赤ちゃんに問題となる感染症―C型肝炎ウイルス― 広島市民病院 総合周産期母子医療センター 元センター長 林谷 道子

 赤ちゃんに問題となる肝炎ウイルスには、B型肝炎ウイルス以外にC型肝炎ウイルスがあります。 C型肝炎ウイルスに感染しているお母さんからの母子感染の頻度は高くありませんが、B型肝炎のような予防のためのワクチンが開発されていないため、赤ちゃんへの感染に注意をはらうことが必要です。

 

C型肝炎ウイルスとは? B型肝炎ウイルスとの違い

 C型肝炎ウイルスは遺伝情報であるRNAを中心に、その周りを芯(コア)と外殻(エンベロープ)が取り囲む二重構造になっています。

 

 

 ①C型肝炎ウイルスは母子感染の頻度が低い

 B型肝炎ウイルスキャリアの大半は母子感染が原因ですが C型肝炎ウイルスによる母子感染の頻度はB型肝炎ウイルスに比べて低く、赤ちゃんに感染しても、3歳までに約3割が自然に治ると言われています。

 

 ②C型肝炎ウイルスは予後が悪い

 C型肝炎ウイルスのキャリアの原因は、母子感染以外の原因が多くを占めています。

 B型肝炎ウイルスの持続感染では、一部(約10-20%程度)が慢性肝炎、肝硬変などに移行するのに対し、C型肝炎ウイルスの持続感染では、慢性肝炎から、放置すれば肝硬変、肝がんに進行する割合が高率であり、定期的な観察や早期の治療が必要です。

 

C型肝炎ウイルスの感染経路

 

①母子感染(垂直感染)

 C型肝炎ウイルスキャリアのお母さんから、産道で血液を介して赤ちゃんに感染が起こる頻度は5~10%程度で、大半のキャリアが母子感染によっておこるB型肝炎ウイルスと比較して、その頻度は低いと言えます。

 

②水平感染

 C型肝炎ウイルスに感染した輸血や血液製剤の使用、予防接種での注射器の使いまわしなどによって水平感染が起こりますが、現在では血液製剤のチェックや使い捨ての注射器などの普及によって、B型肝炎ウイルス同様、このような感染はほとんど起きていません。

 最も多い原因として血液に直接触れる医療行為によることが多く、針刺し事故や透析、検査処置など感染者の血液を介しての感染が35%を占めています。

 また、刺青やピアスの穴あけ、鍼治療、感染者の使う歯ブラシやひげ剃りなどを共用することで感染すると言われています。一方、血液に直接触れることがなければ、普通の社会生活の中で、家庭や集団生活での感染のおそれはほとんどありません。

 

C型肝炎ウイルスの経過 

①一過性感染

 C型肝炎ウイルスに感染すると、感染後数ヵ月の潜伏期間を経て、倦怠感や食欲不振などの急性肝炎の症状がみられますが、自覚症状がない不顕性感染のこともあります。その後、約30%の人はウイルスが自然に排除され、免疫を獲得します。

 

②持続感染(キャリア)

 C型肝炎ウイルスに感染した約70%の人では、ウイルスが排除されず、持続感染(キャリア)となります。C型肝炎の進行はゆっくりですが、しかし着実に肝臓の線維化が進行します。

 慢性肝炎の方の30~40%の人は約20年の経過で「肝硬変」に進行し、さらに肝硬変の患者さんでは、一年間に約5~7%の人が肝がんを発症すると言われています。

 慢性肝炎、肝硬変、肝がんの60%はC型肝炎ウイルスが原因です。肝臓は「沈黙の臓器」と言われており、症状がなくても、定期的(2~3ヵ月ごと)に検査を受けることが大切です。

 

C型肝炎ウイルスの検査

 C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べる最初の検査がHCV抗体検査です。

 HCV抗体が陽性の場合、C型肝炎ウイルスに感染したことを意味しますが、過去の感染で治っていて現在ウイルスのいない人と、現在も持続感染をしている人が含まれています。

 
 そのため、陽性の場合には、精密検査として、HCV-RNA(定量)検査を行います。これは、血液中にC型肝炎ウイルスの遺伝子があるかどうかを調べる検査で、陽性の場合はC型肝炎ウイルスの持続感染を意味します。

 

 

 妊娠中にC型肝炎ウイルスの検査で陽性が判明した場合の母子への対応

お母さんへの対応

 HCV抗体検査は妊婦健診の際、妊娠初期の感染症検査に含まれています。検査でHCV抗体の陽性が分かった場合、HCV RNA定量検査と肝機能検査が行なわれます。その結果、HCV RNA定量検査が陽性の場合には、母子感染のリスクがあります。

 母子感染は妊娠中に胎盤を通じて起こることもありますが、多くは分娩時の産道感染であり、HCV RNAの値が高い場合、帝王切開で感染率を低下させることができるというデータが存在します。 ただ、帝王切開でも100%感染を防ぐことはできないこと、感染率は低率で、3歳ころまでに自然に治癒する可能性があることなどから、分娩方針についての一定の結論はでていません。

 HCV抗体陽性でHCV RNA陰性のお母さんからの母子感染の報告はありません。

 また、分娩後母乳を与えることで肝炎の感染リスクは上がらないとされていますので、授乳はあきらめる必要はありません。
 

赤ちゃんへの対応

 HCV RNA検査が陽性で、母子感染のリスクがあるお母さんから生まれた赤ちゃんは、お母さんからの移行抗体が血液から消える生後6か月以降に、感染していないかどうかを確認する必要があります。

 母子感染が起こっていても、約30%の赤ちゃんは3歳までにウイルスが排除され、HCV RNAが陰性となり治ってしまうので、原則として3歳までは赤ちゃんへの治療は行なわれません。

 

 

C型肝炎ウイルス水平感染予防

 C型肝炎ウイルスの水平感染の予防は、B型肝炎ウイルスの予防と同様、日常の生活の中で、血液や体液に接する際の注意が重要です。

 

 

C型肝炎ウイルスの治療

 1992年以降、わが国ではインターフェロンという注射薬による治療が行われていました。インターフェロンによる治療は効果が不十分であるだけではなく、副作用も多く、新しい治療が望まれていました。

 その後、2014年9月からインターフェロンを使わない、飲み薬だけの治療「インターフェロンフリー」治療が始まり、C型肝炎の抗ウイルス治療の主流となっています。

 ウイルスの型や肝炎の進行度などをもとに治療薬が選択されます。これにより、慢性肝炎から代償性肝硬変までの初回治療の場合、95%以上の人でウイルスを体内からなくすことが可能となっています。インターフェロンのような副作用が少ないため、短期間で安全に治療ができるようになり、インターフェロン治療はほとんど行われなくなりました。

 

最後に

 妊娠中に、初めてC型肝炎ウイルスキャリアであることが分かったお母さんは、赤ちゃんへの感染のリスクに心を痛められることと思います。C型肝炎はB型肝炎のようなワクチンはありませんが、産まれた赤ちゃんに必要な検査や治療を行うことが将来的に赤ちゃんの肝臓を守ることにつながります。

 辛い思いをする人がありませんように。

ではまた。  By ばぁばみちこ