【連載 ばぁばみちこコラム】第十回 こどもの事故― 日焼け―   将来的な紫外線の影響を防ぐためには赤ちゃんの頃から日焼け予防を行うことが大切です 広島市民病院 総合周産期母子医療センター 元センター長 林谷 道子

 

 1998年に、母子健康手帳から赤ちゃんの「日光浴」についての項目が消えたのをご存知ですか?

それ以前は、母子健康手帳にも『日光浴のすすめ』という項目があるほど、日光浴は健康に良いと信じられていました。しかし、紫外線による皮膚がん・白内障などの有害性が徐々に分かってきたことから、日光浴ではなく外気浴のみで十分であるという考え方に変わり、日本でも1990年代に入り、ようやく紫外線対策を積極的に行うようになってきました。

 

紫外線の種類とその影響

 太陽からはさまざまな光が発せられていますが、オゾン層を突き抜けて地球に降り注いでいるのは『赤外線・可視光線・紫外線』の3種類の太陽光です。人間の目に見える光は可視光線だけで、紫外線は目で見ることができません。

 紫外線には、A,B,Cの3種類があります(表)。波長が短いほど人間の皮膚への影響は強く、波長が最も短い紫外線Cが一番危険ですが、オゾン層を通過しないため、紫外線による悪影響のほとんどは紫外線Bによって引き起こされます。

 紫外線Bの有害性は紫外線Aに比べて強力で、紫外線による皮膚がん・白内障などの悪影響のほとんどは紫外線Bが原因といっても過言ではありません。

表 紫外線の種類

紫外線A(UV-A)

普段浴びている紫外線の約90%以上を占め、気候や天気などに関係なく、1年中地表に達している。紫外線の中では最も有害性は少ないが、活性酸素を発生させる力は紫外線Bよりも強く、波長が長いため真皮まで届き、浴びる量が多くなれば美容に悪影響をあたえる。一方、紫外線Aによって作りだされたメラニンは紫外線から肌の細胞を守る働きがある。

紫外線B(UV-B)

紫外線Bは紫外線Aと違い、波長が短いため肌の表皮までしか届かないが、その有害性は紫外線Aの100~1000倍強いとされており、美容に悪影響があるだけでなく、皮膚がん、白内障、免疫力の低下などと深く関わっている。太陽光を浴びて一時的に肌が赤くなったり、痛くなったり、水ぶくれなどができるのはこの紫外線Bが原因である。

紫外線C(UV-C)

紫外線Cは紫外線の中で最も有害性が強いが、オゾン層で吸収されるため、標高の高い山頂などを除いては地表には届いていない。今後オゾン層の破壊が進むと地表に届く可能性がある。

 

紫外線のメリット、デメリット

 

 紫外線は、植物・作物の成長を促すのに必要です。また、骨を作るカルシウムの吸収に必要なビタミンDの合成作用、細菌、雑菌、カビ類などへの殺菌作用などのメリットがありますが、健康や美容にとっては多くのデメリットがあります。

 人間が一生涯に浴びる紫外線量のうち、約50%は18歳までの子どもの頃までに浴びていると言われており、赤ちゃんの頃から将来のために紫外線対策を行うことが非常に重要なのです。

 


①皮膚がん

 紫外線を浴びた後の日焼けの仕方は人によって様々です。メラニンをつくる能力が低い人は紫外線を浴びても赤くなるだけで褐色になりづらく、逆にメラニンを合成する能力が高い人はすぐに肌が褐色になってしまいます。メラニンが過剰にできると将来的にシミやシミの原因になります。その一方でメラニンには紫外線を吸収、散乱してお肌の細胞を紫外線から守る働きがあるため、メラニンを合成する能力が低い人(メラニン量が少ない白人など)ほど、紫外線によって遺伝子に傷がつきやすく、皮膚がんになりやすいことが分かっています。特に若いうちに紫外線を多く浴びるほど皮膚がん発症率が高くなるだけでなく、発症する年齢も早くなることが分かっていますので、皮膚がんを防ぐためには赤ちゃんや子どもの頃からの紫外線対策が大きなカギとなります。

 皮膚がん発症率が日本に比べてはるかに高いオーストラリアなどでは、国をあげて紫外線の悪影響についての教育や予防の重要性などの紫外線対策に取り組んでいます。

 


②紫外線アレルギー(日光過敏症・日光性皮膚炎)

 紫外線(によって肌に湿疹が出来たり、赤く腫れあがったり、かゆみを伴います。紫外線を浴びることによって作られる抗体が一定量を超えると紫外線を浴びるたびにアレルギー症状が出るようになります。紫外線アレルギーは完治することはかなり難しいとされています。

 


③紫外線と白内障

 WHOによると白内障の約20%は紫外線が原因だとされており、発症率も紫外線量が多い地域に住んでいる人ほど高いことが分かっています。

 


④紫外線と免疫力、疲労

 紫外線は免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくなってしまうことも分かっています。紫外線を大量に浴びた時にヘルペスが出やすいのも免疫力が低下したためなのです。また紫外線を浴びることによって活性酸素が発生し、疲れを感じやすくなるのです。

 


 

紫外線の害から赤ちゃんを予防するには?

 

 赤ちゃんの肌を直射日光に長時間当てないことが大切です、日焼け止めを塗るだけでなく、帽子や通気性のいい長袖のパーカーやケープなどで肌の露出をなるべく避けましょう。また、1日で紫外線が最も多くなる10時から14時は外出や外遊びは短めにしましょう。

 オーストラリアでは、1980年代に入り、紫外線対策としてslip(長袖を着る)・slop(日焼け止めを塗る)・slap(帽子を被る)と呼ばれるSun Smartを積極的に指導しています。

紫外線対策のアイテム

①服装

 物理的に紫外線から肌を守る長袖の服や手袋、アームカバーを身につけることが大切です。最も効果的な素材はポリエステルですが、通気性を考えると綿との混紡素材がおすすめです。また、最近はUVカット効果が高い衣類も販売されています。また、黒い色の服の方が、紫外線予防効果が期待できます。

 


②帽子、日傘

 帽子は野球帽のような顔前面を覆ってくれるだけでなく顔、首、頭全体を覆ってくれる麦わら帽子のような「ツバの広い帽子」が理想的です。

 日傘は頭、顔、首など、上半身のほとんどを紫外線から守ってくれる効果が期待できます。

 


③サングラス

 UVカット加工されているサングラスは紫外線による白内障予防効果がかなり期待できます。

 


④日焼け止め

日焼け止めに記載されているSPFとPAとは?

 SPFとはSun Protection Factorの略で肌を赤くする紫外線Bの防止効果を表す指標です。SPF1で約20分、SPF20で約7時間日焼けを遅らせることができます。

 PAとはProtection Grade of UVAの略で肌の内部に到達する紫外線Aの防止効果を表す指標です。+++は非常に効果がある、++はかなり効果がある、+は効果があることを意味します。

 

子どもに使う日焼け止めの選び方

 日焼け止めは子ども専用で、刺激の少ないタイプがおすすめです。SPF値やPA値は、むやみに高いものを使用すると肌への負担が大きいので、用途に合わせて適切な指数の物を使用することが必要です。日常生活の中の外出程度であれば、SPF15~20、PA++程度の日焼け止めを、海や山に行く際には、SPF20~30、PA++~+++程度の日焼け止めを使用します。

 また、子供は汗をかきやすいので、汗によって日焼け効果が減少しない、ウォータープルーフタイプの方がおすすめで、外出の30分前に塗ると、外出中肌を効果的にガードしてくれます。

 


 

日焼けが起こってしまったら?

 日焼けをして肌が赤くなってしまった場合は、冷たい水、濡れたタオル、氷などで冷やして赤みを落ち着かせてから保湿をしましょう。軽い日焼けは、これらのケアで大丈夫ですが、水ぶくれになったり、皮膚の痛み(ヒリヒリ感)が引かないような場合は早めに皮膚科を受診して、適切な処置が必要です。

 

さいごに

 今年の夏は異常気象が続いています。夏のお出かけには、熱中症や虫さされ対策とともに日焼け予防も忘れずにしてくださいね。

ではまた。  By ばぁばみちこ