ちょっと楽って嬉しいね! 我が子から「ちょい楽ばんど」をみんなの元へ まるいラボ 代表 圓井美貴子

 もう4年ぐらい前のこと。私は日々の陽子の介護で、しばしば腰痛を感じるようになっていました。陽子は30キロ近くなり、腰痛ベルトなどで腰の保護をしていないとマズイなという感じ。とはいえ、腰痛ベルトも、トイレ時には不便だし、暑かったり、痛かったり・・・腰が落ち着いたらつけるのをやめ、また痛くなって付け・・・の繰り返しでした。

「何か、便利なモノ、つくれないかな?」

 

 そんなある日、洋裁の得意な母と、この抱っこの負担をどうにかして軽減できる道具を作ってみようと思ったのです。私は言う人、母は作る人♪そんなタグでのモノ作りは日常茶飯事のことだったのだけど・・・それが数年後に「ちょい楽ばんど」という商品として、デビューするなんて、その時思ってもいませんでした。私たちが欲しかったものは、変わらないいつもの抱っこをサポートする抱っこ補助具。複雑でなく簡単で、コンパクトになるものがいい。とにかく欲しいものを形にする!

 こうして、「ちょい楽ばんど」が完成し、ちょうど徳島も地震への備えが真剣に言われ始めた頃で、災害時にも、陽子をこれで抱っこして逃げられると思いました。

 

 

 それから2年ほど経ち、平成25年に結成した徳島県肢体不自由児者父母の会連合会の活動も軌道に乗ってきて、仲間たちが我が家にしばしば集まるようになり、当事者の絆が強まってきた頃、友人が「ちょい楽ばんど」を見て「これいいでぇ!私も欲しい!」と。「ほんなら作ってあげよか?」と母。

 それが、「ちょい楽ばんど」の「ちまたデビュー」でした。それから、他の友人たち、そして支援学校の先生も、「欲しい!」「商品化したら?」「特許とったら?」と。私は、「ほんまぁ?けど、特許って、どこに聞いたらいいん?」・・・そこからのスタートでした。それに、商品化していろんな人に使ってもらうとなると、自分なりに確固たるものにしないといけないと思いました。


 そこで、「ちょい楽ばんど」のニーズを調査を、県内支援学校の肢体不自由の子を持つ保護者のみなさん、講演先で出会った重心の子供の保護者のみなさんにも(ここすまネットのみなさんにもお願いしましたね!ありがとうございました!)実施しました。そのモニタリングでは、日々の介護負担の不安や災害時の対策の必要性、そして「ちょい楽ばんど」による介護負担軽減の評価も得られました。また、お友達が使用した様子をビデオに撮って、楽しい紹介動画も作成しました。「ちょい楽ばんど」を商品化して開業したら、重心の子たちがモデルとしてここで仕事をしてもらえるかも!『重心の子たちだって社会の役割を担い仕事ができる』って、ずっと思ってきたことがここで実現できるかも!と、身の丈知らずなことまで思ったりしました。そして、多くの方のアドバイスをもらって、特許、意匠、商標も出願し、婦人発明家協会主催の「なるほど展」にもエントリーもしました。

 ここまできたら、なんと!私以上に、周りの仲間たちが沸き立っていました!みんなの笑顔と応援に、これは「ちょい楽ばんど」をちゃんと世に出して、障害のある子、家族、支援者・・・みんなの喜びを生み出さなくちゃ!そして、一般の方々にも、重心の子たちの介護について理解をしてもらい、私たちのhelpにも、当たり前の事として、気負わず対応して欲しいと改めて思いました。

 3月、エントリーしていた「なるほど展」で、厚生労働大臣賞をいただくことになり、陽子と母と3人で上京。この賞が背中を押しているように思え、3月20日、ついに「まるいラボ」を開業、「ちょい楽ばんど」を安心して使っていただくために、専門機関での強度試験も行い、Facebookの「まるいラボ」のページを大急ぎで作り、4月に販売をスタートさせました。そして間も無く、意匠権を取得しました。

 

 販売を開始してから、たくさんの当事者のご家族に出会いました。呼吸器を付けたALSの娘さんを抱っこできたらと、新聞掲載を見て問い合わせくれたご家族、通常学校で同級生と一緒に臨海学習に行く際の船への乗り込みに使いたいと言った先生、知的障害の子だけど、災害の時にこの子を抱けるようにと言ったお母さん・・・みんな、いろんな思いの中で子供と共に、溢れる愛情の中で過ごしています。また、Facebookの問い合わせで県外の方々とも繋がります。呼吸器をつけた重度障害の子供のお母さんたちからの問い合わせでは、在宅に向けてトレーニング中だけどお家が2階・・・、飛行機に乗る予定があって・・・などの具体的な要望での「ちょい楽ばんど」の活用を提示してこられます。近くだったら会って一緒に考えることもできるけど、できるだけ状況を伺って「ちょい楽ばんど」のことはもちろん、その他のアイデアや情報も提供したりします。

 

 なぜなら・・・「ちょい楽ばんど」は100%願いを叶えるものじゃないからです。あくまで、「ちょっと」手助けするもの。障害のある子と家族の生活は個々に違って、そんなに容易くない。だから、その人に合ういろんな情報を集めて、その中の一つとして使ってもらえたらいいなと思うんです。だけど、「ちょい楽ばんど」の「ちょっと」からつながる思いの共感があったり、喜びがあったり、安心があったりする。それが、今の私の一番嬉しいことです。「まるいラボ」の仕事は、当事者の家族の会活動から生まれたと言っていいし、仲間がいて、生の声があってこそ意味を成すし、そこで障害のある子たちや家族の生活が豊かになり、さらに新たな生きがいも得られるようになれば、なお嬉しい!

 今後も、地道で、正直で、暖かい「まるいラボ」を。そして、「ちょい楽ばんど」を筆頭に、当事者だからこそ欲しいものづくりを、楽しみながらしていきたいです。私が「楽しみながら」生み出したものは、きっとみんなの「楽しみ」を作っていけると思うから♪

 

 以上、「ちょい楽ばんど」誕生の秘話?!を、今の思いとともに綴ってみました。

 現在、夏にピッタリと一目惚れして仕入れた生地の「ちょい楽ばんど」のご予約を承っています。「ちょい楽ばんど」は、40キロ程度までの抱っこできる方に使っていただくことを想定して制作しています。あくまで抱っこ補助具ですので、介護者の身体負担を考え、抱けない方の介護に使用しないようにお願いしたいです。また、「ちょい楽ばんど」を使用しての2人介護も有効と、購入者からの情報も得ています。子供さんの状態に合わせて使用方法を工夫し、笑顔いっぱいの毎日に生かしていただけたら幸いです。

 基本的な使い方は、チラシの写真をご覧ください。Facebook「まるいラボ」ページでは動画で使い方も紹介しています。また、「うちの子だったら?」と気になることあれば、お気軽にお問い合わせくださいね!

 

ちょい楽ばんどチラシ(PDF)